地域生活に役立つシニアにとってのLINEは、DXとして活用可能なのか?

【コラム】地域生活に役立つシニアにとってのLINEは、DXとして活用可能なのか?

女子部JAPANでは、シニア向けスマホ講座のカリキュラム作成や講師を担当してきた中で、これまでに400人を超えるシニアの方々と接してきました。単に講義を行うだけではなく、参加者との対話を通じてシニアが抱えているスマホに関するお悩み事を直接伺えるのは、とても貴重な経験であり、その経験から得た学びを次の講座にフィードバックしながら進めています。ところが先日、従来のスマホ講座とは少し様相の異なるスマホ講座を開催する機会を得ました。それは某地方都市の自治会からの依頼によるもので、その地域に住むシニア層にLINEの活用法を中心とした講座を実施してほしいというものでした。

今回は、この講座を通して感じたシニア層の生活におけるコミュニケーションツールとしてのスマホの必要性と、その実現に向けての壁について考察し、デジタルデバイド解消のきっかけにしていければと思います。

高齢者の社会的孤立を防ぐために求められているLINEの活用

厚生労働省「平成26年 国民生活基礎調査の概況」の「世帯構造別にみた65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合の年次推移」によると、昭和61(1986)年には全体のほぼ半数を占めていた三世帯世代が、調査時の平成26(2014)年には約13%にまで落ち込み、高齢者の単独世帯が4分の1、夫婦のみ世帯が3分の1を占めるほどに急増。超高齢社会に突入した現時点では、その割合がさらに増加していると考えられます。

ここで問題となるのが、高齢者の「社会的孤立」です。近隣住民との交流もなくなり、心身面で大きな不安を抱えていたとしても、その状況を誰も知る由もない…。

前置きが長くなりましたが、今回の依頼の背景にはスマホを活用することで住民である高齢者たちを「つなぎ」、「孤立」を防ぐ意味合いがあったのです。そして、迎えた講座当日、会場には自ら参加を希望した20名を超えるシニア層の方々が集まりました。そのほとんどが70歳以上、やや女性の方が多いのは、これまでのスマホ講座と同じ風景でした。

なぜ、シニアにLINEが必要なのか? 考えられる9つの理由

今回の講座のテーマが「LINEの活用法」だったこともあり、参加者の半数以上がすでにLINEを使用していました。当日の参加者からの意見も参考にしながらシニアにとってのLINEの必要性について考えてみました。

  • メールは毎回のアドレス入力や検索に手間がかかるが、LINEであれば友だち登録後は、トーク画面から相手を選択するだけで済むので、ITリテラシーの低いシニアでも使いやすい。
  • スタンプを利用することで文字打ちしなくても、ある程度のコミュニケーションがとれる。
  • 自分で撮った写真を簡単に送信できるので家族や友人とのコミュニケーションが活発化する。
  • ビデオ通話を使用すれば、相手の顔が見えるのでお互いの健康状態を確認できる。
  • 返信がなくても「既読」が付けば、安否確認代わりになる。
  • グループを作ることで複数の人へ一度に連絡ができる利便性の高さ。
  • 自治体や地域からの連絡等をLINEで受け取ることができるため、情報を獲得するツールとしても活用できる。
  • グループLINEを活用することで趣味仲間など人の輪が広がり、コミュニケーションが活発化する。
  • zoomなどのコミュニケーション・アプリの使用は難しくハードルが高いが、LINEはシニア層でも利用しやすい簡便さがある。

現在、高齢単身者世帯が増加していることからも、シニア層にとってコミュニケーションツールとしてのLINEは、さらに重要度が高くなると思われます。

シニアがLINEを使ううえでの「壁」とは?

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zoomなどのミーティング用アプリに比べて、比較的簡単に使えるLINEではありますが、それでもシニア層が活用するうえで難しいと感じる壁がいくつかあります。ここでは、今回のスマホ講座の参加者から挙がった声をご紹介します。

  • LINEアプリをインストールした後の新規登録が難しい。
  • 新規登録時に入力するパスワードの設定がよく分からない。
  • プロフィール用写真の登録方法が分からない。
  • スタンプを使ってみたいが入手方法が分からない。
  • 連絡したこともない会社から急にLI NEが届いたことで不安になりため、LINEの使用をためらってしまう。
  • グループLINEの作り方が分からず、一人ずつ同じメッセージを送ることになって面倒。

今回の講座参加者で、すでにLINEを使われている方の大半は子どもに勧められ、アプリのインストールも子どもや孫にやってもらったという方々でした。まず、ここに1つ目の問題があります。当然ながら、子どもや孫と同居している、あるいは近くに住んでいるシニア層ばかりではありません。先に紹介した、単身世帯・夫婦のみ世帯の急増からも、それは明らかです。仮にスマホを所有する友人に相談したとしても、正しい答えを得られるかどうかは疑問です。なぜなら、その友人も自分でアプリをインストールしたのではなく、誰かにお願いしたのかもしれないからです。

スマホを使えるようになりたいけれど「分からないことを聞く相手がいない」というシニアの需要は相当数あると考えられます。手前味噌になりますが、だからこそシニア層への指導経験を持つ弊社のようなスマホ講座の存在意義があると思うのです。

(株式会社都恋堂 小林 保/
「高齢社会エキスパート/総合」認定)