デジタルデバイド解消の第一歩は、 私たちの「当たり前」を疑うことにある

【コラム】デジタルデバイド解消の第一歩は、 私たちの「当たり前」を疑うことにある

「どんな人も取り残すことなく、スマホの便利さやたのしさを届けていきたい」という想いのもと、私たちDXマニュアル編集部では延べ500人を超えるシニアの方々にスマホの使い方を伝えてきました。その活動の中で、シニア世代のスマホリテラシーの現状を知り、
シニアの方々に共通する多くの課題に対応してきました。そこで得た知見の一部をご紹介します。

私たちにとって「当たり前」のことが、
「当たり前」ではないことを知る

物心がついた頃からインターネットなどが身近にあるデジタルネイティブ世代や、仕事や趣味を通じてパソコンに触れてきたミドル世代とは違い、多くのシニア世代にとってスマホとは、“いろいろなことができる電話”であり、初めて触れる精密機械のような感覚をお持ちの方も少なくありません。
特に、私たちが運営するスマホ講座の参加者の多くは、“初心者”と呼ばれる方々です。ガラケーからスマホに乗り換えてまだ日が浅いとか、電話・カメラ・LINE以外の機能はほとんど使用していないという方が中心です。そのような初心者の方には、スマホに対する“恐怖心”を抱いている人もいらっしゃいます。
例えば、「インターネット検索中に変な操作をしたら、お金を騙し取られたりするのではないか」、「個人情報が抜き取られるのではないか」、「精密機械だから、そもそも触れることに不安を感じる」という方が少なくありません。
「いや、そんなことはないよ」と思いますよね? しかし、シニアの方々からすると、私たちにとっては当たり前のことが、決して当たり前ではありません。だからこそ、スマホ操作に不安や恐怖を感じてしまうのです。
私たちは、その感覚の違いを認識したうえで対応することが、シニア世代のスマホリテラシーを向上させる第一歩だと考えています。

何がわからなくて、何が難しいのか!?
シニア層の「お困りポイント」事例5

私たちとシニア世代のスマホ初心者との理解や認識の違いは、どんなところなのか。スマホ教室を通じて体験した、5つの具体例とその解決法を紹介します。

【ポイント1】
●英語やカタカナ、専門用語がわからない
スマホの操作方法や機能は、そのほとんどが英語や専門用語です。パソコンを使ってきた人ならば理解できる程度の用語も多いのですが、いきなり「タップ」や「スワイプ」などと聞いたこともない横文字を並べられても、何を言っているのか理解できないのも当然なのです。
《解決法》
そこで、私たちのスマホ教室では用語を日本語に置き換えて説明するようにしています。
例えば操作方法に関しては、「タップ」は「軽く触れる」、「スワイプ」は「なぞる」、「フリック」は「はらう」というように表現しています。無理して用語を覚えてもらうのではなく、どう指を動かすのかを理解してもらうことを第一に考えて指導しています。

【ポイント2】
●スマホの画面を強く押してうまく操作できない
そもそもスマホがタッチパネル式であることを理解していない方に見られるケースです。
長年、ガラケーを操作する際、指先にその感触を確かめながら使っていたため、同じように指で強く画面押してしまうのです。結果、うまく操作できなくて困っている方が多くいらっしゃいます。
《解決法》
まずは、ガラケーとは操作方法が違い、“押す”のではなく、指先を離した時に反応することを説明します。次に実践編として、その感触を体感しやすい「カメラ」のシャッターボタンを使い、指先が離れた瞬間に「カシャ」っとシャッターが切れる感覚を実感してもらうようにしています。

【ポイント3】
●タップ、スクロールなどの微妙な手加減が難しい
これには大きく2つの理由が挙げられます。1つは単に指先で行う操作に慣れていないケース。もう1つは、加齢による皮膚の乾燥が原因でうまく操作ができないケースです。そのためシニアの方の中には、使い方を覚える前に操作方法でつまずく人が少なくありません。
《解決法》
スマホを使う前に、手を洗って皮膚を湿らせておくとか、ハンドクリームを使うことをお伝えしていますが、なかには「ハンドクリームを塗って、すぐにスマホを使うと画面がベタベタになるから嫌だ」と言われる方もいます。その際は、100円ショップでも購入できる「タッチペン」を紹介するようにしています。

【ポイント4】
●インターネットを使うと個人情報が漏洩すると思っている
オレオレ詐欺などの高齢者を狙った犯罪や個人情報漏洩問題が多発していることもあり、インターネットへのアクセスに不安を感じているシニアの方もいらっしゃいます。また、突然ポップアップ広告が出てくると「お金を騙し取られるのではないか」と心配になる方も多いようです。その結果、電話やLINEくらいしか使わないようになり、スマホ初心者の状態が延々と続いてしまうのです。
《解決法》
ご家族から「アプリをダウンロードしたり、余計なネット検索をしないで」と注意されているシニアの方も少なくありません。ご家族の意向であるならば無理にはお勧めはできませんが、せっかくスマホを所有しているのですから、便利な機能を活用していただきたいと私たちは考えています。インターネットは、その一つです。そこで、インターネットを使っていて意図せぬページに飛んでしまい、どうしようか困った時には「ホーム画面に戻ってください」とお伝えしています。その手順を説明しつつ、クレジットカード番号を入力するなどの手順を踏まない限り、お金を取られることはないとお話しして、安心していただくことを心がけています。

【ポイント5】
●パスワードの設定が面倒くさくて解除してしまう
そもそも、半角英数で構成する数桁のパスワードを考えるのが面倒とか、覚えられないからパスワード設定をするのが嫌だという方が多くいらっしゃいます。自分のスマホにパスワードを設定しておかないと、勝手に他人に見られて情報を抜き取られる危険があることを理解されていないケースです。
《解決法》
この場合は、パスワード設定をしないと危険であることを丁寧に伝え、設定解除の方法についても伝えるようにしています。また、パスワードを忘れないように紙に書き、スマホケースに貼り付けている方も稀にいらっしゃいます。その場合は、パスワードを他人に知られることが最も危険であるとお伝えし、パスワードを書いた紙は自宅に保管しておくよう説明しています。

上記で紹介した具定例は、ほんの一例に過ぎません。「習うより慣れろ」ではありませんが、日頃からスマホを操作しているうちに使い方も上達するものですが、シニアの方々の場合はそれ以前に問題を抱えているケースも少なくありません。
繰り返しになりますが、スマホを使い慣れた私たちにとっては当たり前に思うことが、シニアの方々にとっては当たり前ではないのです。そのことを念頭に置いた接し方が大切です。そのうえで一人ひとりに寄り添いながら、「どんな人も取り残すことなく、スマホの便利さや楽しさを届けていきたい」という想いで私たちは活動を続けています。
もし、シニア世代へのスマホ指導でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。